顧客ヒアリングの練習問題|質問から次の判断につなげるFDE自主教材

顧客ヒアリング演習のステップを示した概念図

この練習問題では、顧客の回答に応じて開発判断を更新する手順を体験します。カードを開く前に質問と判断仮説を手元に書き留めて進めてください。

目次

質問後に変わる開発判断

OpenAIのForward Deployed Engineer職務記述書では、顧客との課題特定から技術的な対象範囲や実現条件の整理、設計、実装、展開までを担う役割が示されています。職種の全体像はFDEの役割解説を参照してください。本教材は初期相談から前提条件を絞り込む思考手順を反復練習するために作成したものです。

初期依頼を読み質問を考える

相談案件と進め方

【初期依頼文(事例ID: F015-SYNTHETIC-01)】
「総務の問い合わせ窓口責任者です。社員から届く社内規程の問い合わせに答えるAIを作りたいと考えています。窓口担当者から、資料を探したり回答を確認したりする負担が大きいと聞いています。まずは試せるものを提案してください。」

カードの回答は架空の設定情報であり、業務観察や実測で裏取りされた客観証拠ではありません。一人で行う場合は質問と判断仮説を手元に記録してから対応するカードを選びます。二人で行う場合は顧客役がカード本文を見せず該当の事実のみを口頭で伝え、推測で回答を補わず、未記載の質問には未確認と答えます。

手元に残す記録

回答を読む前に質問と判断仮説を必ず記録します。見出しの観点も手掛かりになります。回答閲覧後に質問前欄を書き換えてはいけません。気づきは回答後欄に追記します。

【記録テンプレート】
■ 開く前(回答後の上書き不可)
開始前に既読のカード/例:
質問:
確かめたいこと:
仮説(Aの場合/Bの場合):

■ 回答後
選んだカード:
直接の回答:
付随情報:
追加質問と仮説:

■ 追加確認後(または未確認確定後)
判明したこと/未確認事項:
進めることと保留すること:
次の確認相手と内容:
質問前の記録と回答後の判断を残す5つの手順
  1. 1. 質問と仮説の記録カードを開く前に、確認したい質問と結果に応じた判断の分岐を手元に書きます。
  2. 2. 回答カードの確認意図に最も近いカードを選び、最初の回答を直接の回答と付随情報に整理します。
  3. 3. 追加質問と仮説の記録残る不明点に対する追加質問と、その結果に応じた判断仮説を手元に書きます。
  4. 4. 追加確認または別カード追加確認欄を開くか、該当がなければ別のカードを探すか未確認として進めます。
  5. 5. 判断と未確認事項の整理得られた情報から、着手すること、保留すること、次の確認行動をまとめます。

回答カードの確認手順

手元の質問と意味が最も近いカードを1枚選びます。複数論点がある場合は最も近い1点から進め、残りは次の追加質問に回します。最初の回答を読んだら、追加質問と判断仮説を記録してから追加確認を開いてください。該当カードがない論点は未確認と扱い、確認先と必要資料を整理します。

C1:利用場面

【最初の回答】
最初に試してほしい利用者は総務の窓口担当者です。社員は現在の問い合わせ窓口を使い続けます。担当者が回答根拠や下書きを確認する支援を希望しています。

追加質問を記録したら開く:確認・送信と責任

【追加回答】
通常の問い合わせは窓口担当者が規程と照合して送信します。規程だけで判断できない問い合わせは総務責任者へ回します。AIから社員への自動送信は、今回の試行には求めていません。

【未確認事項】
試行に参加する担当者と対象部署の具体的な範囲は未定です。

C2:現在の作業

【最初の回答】
担当者からは、規程を探すこと、現在使える版か確かめること、例外の判断を待つことに負担があると聞いています。どの工程の負担が最も大きいかは計測していません。

追加質問を記録したら開く:作業記録と観察

【追加回答】
問い合わせの受付と返信の時刻は残っていますが、検索、下書き、確認待ちの内訳は残っていません。窓口責任者は作業観察の調整ができます。観察対象はこれから決めます。

【未確認事項】
工程別の所要時間、問い合わせ分類ごとの件数、主な停滞要因はまだ分かりません。

C3:参照資料

【最初の回答】
社内ポータルの規程が正式な参照元です。一方、窓口の共有フォルダには古い版や担当者のメモも残っています。メモは正式な規程ではありません。

追加質問を記録したら開く:改定と更新反映

【追加回答】
規程管理担当が正式版を公開します。AI用に複製した資料への更新通知、反映期限、反映確認の担当者は決まっていません。

【未確認事項】
対象規程の一覧、改定頻度、取得方法、更新反映の運用は未確認です。

C4:閲覧範囲

【最初の回答】
一般社員が閲覧できる規程と、人事担当者だけが閲覧できる資料があります。総務の窓口担当者全員が人事限定資料を閲覧できるわけではありません。

追加質問を記録したら開く:問い合わせ履歴とサービス送信条件

【追加回答】
過去の問い合わせには個人に関する情報が含まれます。AIサービスへ送ってよい資料の範囲と承認手順は、情報セキュリティ担当への確認が必要で、まだ確認していません。

【未確認事項】
具体的な権限一覧、利用サービスへの送信可否、問い合わせ履歴の利用条件は未確認です。

C5:判断に迷うケース

【最初の回答】
複数部署にまたがる勤務扱いなど、規程だけでは結論を出せない問い合わせがあります。現在は窓口担当者が総務責任者へ相談しています。

追加質問を記録したら開く:例外判断と不明時の扱い

【追加回答】
総務責任者が必要に応じて関係部署へ確認します。過去の個別判断は、そのまま全員に適用できるルールではありません。根拠が足りなければ回答を確定せず、追加確認に回したいと考えています。

【未確認事項】
例外の一覧、分類ごとの相談先、責任者不在時の経路は未整備です。

C6:関係者と決定

【最初の回答】
窓口責任者は担当者の協力や作業観察を調整できます。ただし、資料利用やサービス導入のすべてを単独で承認する権限はありません。

追加質問を記録したら開く:決定者と承認範囲

【追加回答】
業務範囲は総務責任者、正式資料の扱いは規程管理担当、データ送信やアクセス条件は情報セキュリティ担当への確認が必要です。本番導入の最終承認者は、まだ特定できていません。

【未確認事項】
本番承認者、費用承認の経路、継続運用の担当は未確定です。

C7:試行の評価

【最初の回答】
窓口責任者は、担当者の負担を軽くしつつ、根拠を確かめられない回答を増やしたくないと考えています。削減率や回答精度の目標値は決めていません。

追加質問を記録したら開く:評価ケースと比較方法

【追加回答】
総務責任者と窓口責任者が、通常ケースと判断を保留すべきケースを選び、根拠の確認可否、保留の扱い、作業負担を確かめる案があります。比較方法と継続判断の基準は未合意です。

【未確認事項】
評価ケース、現状の測定値、許容基準、試行の継続・中止条件は未確定です。

意図と判断のつながりを採点する

1サイクルごとの採点ルール

「質問と仮説 → 最初の回答 → 追加質問と仮説 → 追加確認 → 次の判断」の1サイクルを10点満点(5項目×各2点)で振り返ります。複数サイクルの合算や合格点の設定、10点換算や初見との比較は行いません。初見サイクル中の記録漏れはその項目を0点とします。開始前から内容を把握している再挑戦は、事前項目1・3をN/Aとし、事後項目2・4・5のみ計6点満点で評価します。模範例の転記では加点しません。一度にすべてのカードを読むのではなく、質問に応じて選びます。

評価項目配点基準(0点 / 1点 / 2点)確認する記録対象
1. 最初の質問と仮説0点:未記録、または回答閲覧後に記入
1点:質問のみで結果に応じた判断分岐がない
2点:質問意図と回答結果に応じた判断分岐を記録した
回答を読む前の手元メモ
2. 情報の受け取り方0点:カード外の推測を混同、未確認を確定扱い
1点:カードの事実のみを記録した
2点:質問への直接回答と付随情報を区別して記録した
最初の回答を読んだ直後のメモ
3. 追加質問と仮説0点:未記録、または追加回答閲覧後に記入
1点:質問のみで結果に応じた判断分岐がない
2点:追加質問と判断仮説を記録した(教材外の妥当な質問も含む)
追加確認を開く前の手元メモ
4. 回答後の判断0点:未記録、または事実と矛盾する判断
1点:暫定判断はあるが根拠との接続が弱い
2点:得られた事実に基づき着手と保留を切り分けた(維持も可)
追加確認後または未確認確定後のメモ
5. 未確認事項の扱い0点:未確認事項を無視した、推測で補った
1点:未確認事項を一覧にした
2点:未確認事項と確認相手・内容を書いた(確認先不明なら探索行動と確認内容を具体化)
一連の確認を終えた後のメモ

特定製品名やRAGなどの個別技術、未提示の数値目標や期限を必須条件にしてはいけません。前提条件の確認度合いに基づいて評価します。

採点例:P1経路におけるC1カードの自己採点

【各回答前に記録した場合の10点例】
1. 最初の質問と仮説(2点):開く前に「最初の利用者は誰ですか。社員なら安全性検証を優先、窓口担当者なら下書き支援を検討」と記録。
2. 情報の受け取り方(2点):「直接回答:総務窓口担当者」「付随情報:社員は現行窓口を継続、担当者の根拠や下書き確認を支援」と区別して記録。
3. 追加質問と仮説(2点):追加確認前に「通常回答の送信と例外判断は誰が行うか。担当者が送信するなら下書き支援、自動送信なら承認フロー連携を検討」と記録。
4. 回答後の判断(2点):追加回答を受け、「自動送信は求められていないため、窓口担当者向けの下書き・根拠確認支援に絞り、自動送信は対象外とする」と記録。
5. 未確認事項の扱い(2点):「試行に参加する担当者と対象部署が未定のため、窓口責任者へ調整を打診する」と記録。

※初見で最初の事前記録を忘れた場合、項目1は0点ですが、項目3を事前に書いていれば項目3は2点になります。模範例の書き写しは自力思考ではないため加点しません。

異なる質問経路の判断例

思考例1:利用場面から範囲を絞る経路(P1)

【質問の流れ】
1. C1へ「最初の利用者は誰ですか」と質問。仮説:社員なら安全策優先、担当者なら確認支援を優先。
2. C1追加へ「回答の送信と例外判断は誰が行いますか」と質問。仮説:担当者送信なら下書き支援、自動送信なら承認連携。
3. C7へ「試行の成功は何を基準に評価しますか」と質問。仮説:基準合意済みなら環境準備、未合意なら測定設計を先行。
4. C7追加へ「どのようなケースで現行作業と比較しますか」と質問。仮説:ケースと比較方法が確定なら検証設計、未合意なら合意形成を優先。
【発見と未確認事項】
利用者は窓口担当者で自動送信は求められておらず、通常回答の照合・送信は窓口担当者、例外は総務責任者へ回します。負担軽減と根拠確認を重視していますが、比較方法や継続基準は未合意で、参加者や対象部署、評価ケースも未確定です。閲覧権限(C4)や更新運用(C3)はこの経路では未確認です。
【暫定判断】
暫定範囲を窓口担当者向けの根拠確認と下書き支援に絞り、自動送信は除外します。権限等の確認まで実データ投入は保留します。窓口責任者へ参加者の調整を依頼し、総務責任者と評価ケース選定及び比較方法の合意を進めます。

思考例2:資料の扱いから着手条件を確かめる経路(P2)

【質問の流れ】
1. C4へ「参照資料は閲覧範囲に違いがありますか」と質問。仮説:制限なしなら対象資料の候補を整理、制限ありなら扱いを区分。
2. C4追加へ「AIサービスへ送信してよい資料の範囲は確認済みですか」と質問。仮説:送信可能なら条件内で候補検討(実データ利用全体の承認ではない)、未確認なら送信保留。
3. C3へ「正式な参照元はどこにありますか」と質問。仮説:正式版確定なら取得方法確認、メモ混在なら資料切り分けを先行。
4. C3追加へ「規程改定時の複製データの更新手順は決まっていますか」と質問。仮説:更新運用ありなら連携設計、未定なら複製利用を再考。
【発見と未確認事項】
人事に限定資料があり、担当者全員が閲覧できるわけではありません。過去の問い合わせに個人情報を含み、AIサービスへの送信可否は未確認です。正式規程はポータルにありますが共有フォルダにメモや旧版があり、複製資料の更新運用は決まっていません。利用場面(C1)、作業負担(C2)、例外処理(C5)、成功基準(C7)は未確認です。
【暫定判断】
実データの投入と外部AI送信は保留し、試作を行う場合も合成データに限定します。セキュリティ担当へ送信可否を確認し、規程管理担当へ対象規程一覧と更新運用の確認を行います。

発言から要件を構造化する手順は要件ヒアリングの整理手順で解説しています。

条件を変えて、もう一度判断する

再演習:利用対象の変更依頼(R1)

【追加条件】
窓口担当者向け支援案の提示後、総務責任者から「社員が直接質問できる窓口の設置も検討してほしい」と追加相談を受けました。
【演習手順】
これは検討依頼であり直接公開や自動送信の承認ではありません。C2〜C7の設定条件は維持されますが未読カードは未確認として扱います。カードを開き直す前に質問して何を変えるか、見直すべき前提と追加仮説を手元に記録してください。既読事例の応用練習のため初見時の点数とは比較しません。

質問と仮説を記録したら開く:判断の比較例

【判断の比較例】
社員直接窓口では、閲覧制限資料や個人情報を含む履歴を不適切に投入・表示した場合の漏洩リスクや例外への誤回答リスクが生じます。権限分離、送信可否、相談経路、評価基準が合意されるまで直接公開は保留し、他の前提確認を前提としない暫定措置として窓口担当者向け支援を検討します。

本教材は演習用の架空設定であり、実務での利用実績や学習効果を検証したものではありません。

よくある質問

一人でも練習できますか?

カードを開く前に質問と判断仮説を手元に書く手順を守れば一人で練習できます。見出しに論点のヒントが含まれる点は実際の会話と異なります。

質問文が例と異なる場合はどう採点しますか?

確認したい目的や事実関係の意味が合致していれば同一の質問として採点できます。広すぎる質問1つで複数の事実を引き出した扱いは避けてください。

回答を先に読んだ場合はどうしますか?

初見サイクル中に記録せず回答を開いた場合は、記録を欠いた項目を0点とし、事前に記録できた項目は通常通り採点します。一方、開始前から内容を把握していた再挑戦の場合は、事前項目1・3をN/Aとし、事後3項目のみ計6点満点で評価します。なお、回答閲覧後に事前欄を書き足して加点することはできません。

高得点なら採用試験に合格できますか?

編集部独自の自主演習用指標であり、採用試験の合否や実務能力を保証するものではありません。判断の更新手順を学ぶ教材として活用してください。

参考一次資料

以下の外部資料は実務の役割や要件定義の概念を理解するための参考情報です(2026-10-20確認)。教材の設問や配点を保証するものではありません。

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