Azure Document IntelligenceでExcelのテキストボックスが読み取れない場合は、まずモデルと入力形式の対応範囲を確認します。そのうえで、文字取得、表構造、読順の3軸を切り分けて判定方針を定めます。XLSX直接入力とPDF変換時では仕様や認識単位が異なるため、各形式での出力仕様を個別に検証して原因を特定します。
本記事は2026年10月7日時点の公式資料に基づく確認手順および設計ガイドであり、実機での検証結果は含みません。なお、Searchable PDFの対応入力形式および旧プレビュー版のサポート終了状況は2026年10月9日に公式資料で再確認しています。
モデルと入力形式の対応範囲を確認する
対象サービスはAzure Document Intelligenceです。Excelファイル(拡張子 .xlsx)の直接入力に対応しているモデルは一部に限られるため、利用しているモデルが入力形式を満たしているか最初に確認します。
Azure Document Intelligenceのモデル概要に基づき、各モデルのXLSX直接入力の可否および一般的な出力内容を整理します。
| モデル種別 | XLSX直接入力(API 2024-11-30 GA) | モデル本来の主出力(PDF等) | XLSX入力時の文字・構造出力 |
|---|---|---|---|
| Read | 対応 | テキスト行、単語 | words、paragraphsなど(表構造解析なし) |
| Layout | 対応 | テキスト、段落、選択マーク、表(tables) | words、paragraphsなど(XLSX時は表構造解析非対応) |
| Custom classification | 対応 | 文書の分類クラス | 分類結果のみ(文字抽出は非提供) |
| Prebuilt invoice等の専用モデル | 非対応 | 事前定義フィールド | 入力非対応 |
| Custom extraction | 非対応 | カスタム抽出フィールド | 入力非対応 |
直接入力可能なモデルのうち、Custom classificationは文書の分類結果を返すモデルであり、文字データを抽出する用途には適しません。文字情報の取得にはReadまたはLayoutを選択します。
また、表解析の対応範囲にも留意が必要です。Azure Document IntelligenceのReadモデル仕様のとおりReadモデルは tables(表構造データ)を提供しません。さらにAzure Document IntelligenceのLayoutモデル仕様(v4.0 2024-11-30 GA)においても、XLSX直接入力時はtable analysis(表解析)に対応していません。そのため、現行のXLSX直接入力で表構造が出力されない挙動は、読み取り失敗ではなく仕様上の動作です。
APIの仕様とAzure AI Document Intelligence Studio(GUI画面)の挙動も区別する必要があります。APIがOffice形式の入力を受け付ける構成であっても、Studioの操作画面ではアップロードに制約が設けられている場合があるため、動作の確認はAPIリファレンスに沿ったリクエストで行います。
シート内要素の格納形式と抽出仕様を切り分ける
Excelシート内の要素は、セルの値、テキストボックス、図形(オートシェイプ)、貼り付けられた画像などで保持形式が異なります。
Azure Document IntelligenceのLayoutモデル仕様に基づき、各要素の扱いを整理します。
| 要素の格納形式 | 内部の扱い | 抽出仕様 |
|---|---|---|
| 通常のセル | 埋め込みテキスト | wordsやparagraphsとして抽出対象 |
| テキストボックス | 図形等に関連付くテキスト | オブジェクト別の明示的保証なし |
| 図形内の文字 | 図形等に関連付くテキスト | オブジェクト別の明示的保証なし |
| 埋め込み画像 | 画像データ | Office形式内の画像は非対応 |
LayoutモデルはOfficeファイルに含まれる埋め込みテキストを解析して words や paragraphs を出力しますが、Officeファイル内に貼り付けられた埋め込み画像に対するOCR処理には対応していません。請求書等の埋め込み画像が読めない事態に備える上でも、経理業務のAI活用のようにAIに任せる工程と人が目視で確かめる工程を切り分けます。
テキストボックスや図形内の文字は画像データとは異なりますが、公式ドキュメントでオブジェクト別の取得が明示的に保証されているわけではありません。これらをセルと同様の取得対象として一括りに見なすことはできず、個別の抽出可否は未検証の確認項目として扱う必要があります。
帳票のデータ構造やモデルの選定方針を整理する際は、AI導入・自動化の診断窓口にて前提条件の確認を行うことも検討してください。
識別文字と小規模な表で出力を比較する
テキストボックスの読み取り可否を検証する際は、文字取得、表構造、読順(読み取り順序)の判定を分離してテスト素材を設計します。Excel原本(XLSX)とPDF変換後のファイルを用意し、入力形式以外の条件(対象モデル、APIバージョン、解析オプション)をそろえて比較します。なお、PDF変換ツール、印刷範囲、拡大縮小率、改ページ位置の設定も差異の原因となるため、比較の記録対象に含めます。
まず、文字取得の確認用として、格納形式ごとに一意な識別文字を配置します。
- セル:CELL_TEST_01
- テキストボックス:TEXTBOX_TEST_02
- 図形内:SHAPE_TEST_03
- 埋め込み画像:IMAGE_TEST_04
これらの識別文字列だけでは見出しと値の対応関係を判定できないため、表構造の確認用として以下の小さな行列表を同一シート内に配置します。
| 項目名 | 数量 | 状態 |
|---|---|---|
| 部品A | 10 | 確定 |
| 部品B | 20 | 保留 |
テストを実行する際は、モデル名、APIバージョン、入力経路(API直接呼び出し等)を固定し、以下の3軸で結果を記録します。軸ごとに合否基準を分け、XLSX直接入力時の表構造のように仕様上非対応の項目は「失敗」ではなく「評価対象外」として記録します。条件を絞り込んで事前に評価基準を固めておく姿勢は、中小企業のAI導入 完全ガイドが示す小さく試してやめる基準を決める進め方にも通じます。
- 文字取得:各識別文字が
contentやwords内に存在するか。 - 表構造:小規模な表が
tablesとして構造化されているか(表構造解析に対応するLayoutモデル+PDF入力などの組み合わせで判定)。 - 読順:事前に想定した順序に対して、識別文字やセルの内容が
paragraphsの並び順などで正しく得られているか。
XLSX直接入力の課金・処理単位はワークシートですが、PDF入力ではページ単位で認識されます。PDF変換は取得可否や出力結果が変化するかを比較するための切り分け手段であり、文字の有無だけでなく読順の乱れも含めて判定します。
PDF変換後の状態とAPIバージョンを点検する
Excel原本からPDFへ変換して比較を行う際は、変換後のPDFファイルの状態を確認します。変換時に文字が画像化されてテキスト層(埋め込みテキスト)が欠落している場合でも、視覚的に文字が描画されていればOCR(光学文字認識)処理により抽出できる可能性があります。一方、印刷範囲外の除外などで描画自体が欠落している場合は認識できません。また、視覚上は見えなくても内部に文字層が保持されているケースもあるため、目視の見た目だけで成否を即断せず、実際のAPI出力結果(content や words)と照合して点検します。
PDF変換後には以下の点を確認対象とします。
- 印刷範囲の設定により、テキストボックスが対象外となっていないか
- オブジェクトの書式設定で「オブジェクトを印刷する」が無効になっていないか
- 自動縮小により文字が極端に縮小されていないか
- 改ページの位置によってテキストボックスが分断されていないか
- 枠線と文字の重なりにより視覚的な見切れが生じていないか
印刷範囲外の除外や改ページによる見切れは確認すべき項目ですが、それらの一点のみでファイル全体の抽出失敗を断定するのではなく、各要素への影響を個別に調べます。
なお、Azure Document Intelligenceの searchablePDF は、Azure Document IntelligenceのReadモデル仕様のとおり、prebuilt-readモデルで追加料金なしで利用できる機能です。現行のv4.0(2024-11-30 GA)ではPDF入力のほか、画像形式(JPEG/JPG、PNG、BMP、TIFF、HEIF)を入力として検索可能なPDFを生成できます。ただし、これはOffice形式(Excel)からPDFへのファイル形式変換を行う機能ではありません。ExcelファイルをPDFとして検証する場合は、事前にOffice環境やPDF変換ツールによる変換処理が必要です。
使用するAPIバージョンは、正式提供版である 2024-11-30(GA:一般提供版)を指定します。過去のプレビュー版(2023-10-31-preview、2024-02-29-preview、2024-07-31-preview)は2026年6月30日をもってサポートが終了しているため、現行の正式版で動作を確認してください。
業務帳票の自動読み取りや変換設計を整理したい場合は、AI導入・自動化の診断窓口を活用して要件を確認できます。
よくある質問
Excel対応モデルならテキストボックスも必ず読めますか?
必ず読めるとは限りません。ReadやLayoutはXLSX直接入力に対応しますが、テキストボックスや図形内文字の取得を個別に保証する仕様は明記されていません。原本の構造に応じた確認が必要です。
埋め込み画像非対応は図形文字も非対応という意味ですか?
同じ意味ではありません。Excel内の画像はOCR処理の対象外ですが、図形やテキストボックスの文字は画像データとは異なります。画像非対応の制約のみを理由に図形文字が抽出不能と断定はできません。
PDFへ変換すれば必ず抽出できますか?
必ず抽出できるとは限りません。PDF変換は出力の変化を比較する手段の1つですが、印刷範囲外の除外や分断が生じている場合もあり、改善するかどうかは実際の変換結果と出力データを比較して判定します。
searchablePDFでExcelをPDFへ変換できますか?
変換できません。searchablePDFはprebuilt-readモデルにおいて、PDFや各種画像形式(JPEG、PNG、TIFF等)を入力としてテキスト層を付加したPDFを出力する機能です。Excelファイル(XLSX)からPDFへの形式変換を行う機能ではないため、事前のPDF変換が必要です。
参照資料
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – モデルの概要(確認日: 2026-10-07)
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – Read モデル(確認日: 2026-10-07)
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – Layout モデル(確認日: 2026-10-07)
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – バージョン管理と移行ガイド(確認日: 2026-10-07)
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – 最新情報(What’s new)
- Azure AI Document Intelligence ドキュメント – アドオン機能
