Salesforce・Microsoft 365のSaaS値上げの事実と対策 — 為替と機能追加による料金改定にどう備えるか

SaaSの料金改定は、契約更新のたびに起こり得る前提として扱うのが安全です。Salesforceは2025年8月、Microsoft 365は2026年7月に商用プランの価格を改定し、日本マイクロソフトも為替変動を理由に法人向け価格を複数回改定してきました。対策は契約条件の把握・利用実態の棚卸し・特定SaaSへの依存度の分散という判断軸を先に持つことです。

目次

主要SaaSの料金改定の年表【公式発表ベース】

各社の公式発表・公式サポートページで本文を確認できた改定事実のみを載せています。金額・改定率は公式ページに記載された数値。ここでいうリスト価格とは各社が公表する定価のことで、実際の契約額は割引や販売代理店の設定によって変わります。エディションは同じ製品のなかの機能別の等級、単体コンポーネントはセット商品に含めず単独で契約する製品を指します。取得日は2026年9月9日です。リセラー経由の間接販売では実際の価格・請求通貨がリセラーの設定によって変わる場合があります。なお、Microsoft 365の金額はTeamsを含むSKUの米ドル建てグローバルリスト価格です。公式FAQは地域ごとに市場調整を行うと明記しており、日本円での実際の請求額はこの数値の単純換算にはなりません。

企業・製品 発表日 適用日 対象 改定内容
Salesforce 2025-06-17 2025-08-01 Sales Cloud・Service Cloud・Field Service・一部Industries CloudsのEnterprise Edition・Unlimited Edition リスト価格を平均6%引き上げ。Foundations・Starter・Pro Editionは対象外
Microsoft(日本法人向け・為替要因) 2022-11-02 2023-04-01 法人向けライセンス・サービス 日本円の為替変動に伴い、オンプレミス製品を20%、オンラインサービスを15%引き上げ。新価格は2023年4月以降の契約更新・新規契約に適用。ハードウェア(Surface等)とコンシューマ向け製品は対象外
Microsoft(日本法人向け・為替要因) 2023-12-06 2024-04-01 法人向けソフトウエア・クラウドサービス 日本円の為替変動に伴い、一律20%引き上げ。2024年4月以降に適用。ハードウェア(Surface等)とコンシューマ向け製品は対象外
Microsoft 365(グローバル商用スイート) 2025-12-04 2026-07-01 Microsoft 365 Enterprise・Business・Frontline等の商用スイートおよび一部単体コンポーネント(Teams単体・Copilot単体は対象外) セキュリティ・管理機能の追加とあわせてリスト価格を改定(例: Microsoft 365 E3が1ユーザーあたり月額36ドルから39ドル(8%増)、Microsoft 365 Business Standardが12.50ドルから14ドル(12%増)。いずれもTeamsを含むSKUの米ドル建て価格)。既存契約は2026年7月1日以降の最初の更新時から新価格が適用され、それまでは現行価格を維持

Adobeなど他社の料金改定についても、本記事の執筆時点で本文を確認できた公式発表ページに限って掲載する方針のため、年表には含めていません。契約中のプランへの影響は、各社の公式サイトと請求メールでご確認ください。年表に載せているのは、公式発表で本文を確認できた改定事実だけです。

SaaSの料金はなぜ改定されるのか — 改定が起きる構造

料金改定にはいくつかの型があり、どれか1つだけが原因とは限りません。ただし、すべての製品が一律に上がるわけではありません。2026年7月のMicrosoft 365の改定でも、Office 365 E1やMicrosoft 365 Business Premiumのように価格が据え置かれたプランがあります。

  • ドル建て価格と為替: 米国本社が米ドルで価格を設定し、各国はその時点の為替レートに合わせて現地通貨建ての価格を見直す構造です。日本マイクロソフトは2023年12月の発表で、米ドルに対する為替変動を考慮し、年2回の定期的な価格評価の一環として現地通貨建ての価格を調整する場合があると説明しています
  • リスト価格そのものの改定: Salesforceの2025年8月の改定のように、定価表の水準を見直す型です。対象エディションは公式発表で明示されますが、改定の周期まで公表されるとは限らず、2025年6月17日の同社発表にも次回改定時期の記載はありません
  • 機能追加を伴う値上げ: Microsoft 365の2026年7月改定のように、AI機能やセキュリティ機能の追加とセットで価格が上がる型です。使わない機能の分まで単価に含まれる可能性があります
  • プラン統合・従量課金への移行: 個別アドオンを廃止して上位プランに統合したり、利用量に応じた課金に切り替えたりする改定です。Salesforceは2025年6月の同じ発表で、従来のEinsteinアドオン・Einstein 1 EditionをAgentforceのアドオン・エディションに置き換え、利用量に応じたFlex Creditsを導入すると公表しました。契約形態そのものが変わるため、単純な値上げ率だけでは影響を測れません

いずれの型でも、自社がどのプラン・エディションに該当し、いつ契約更新を迎えるかを把握していなければ、改定の影響を事前に見積もれません。

値上げに備える判断基準【チェックリスト】

値上げの発表に驚かないための確認項目です。契約しているSaaSごとに、次の6点を埋めてみてください。

確認する軸 見るべきポイント
契約更新日と自動更新条件 更新のタイミングと、自動更新か都度契約かを契約書・管理画面で確認する
通貨と支払サイクル 米ドル建てか円建てか、年払いか月払いかで為替・改定の影響時期が変わる
アカウント数×単価の棚卸し 契約人数と実際の利用人数にずれがないかを確認する。手順はSaaS費用の棚卸しガイドに委譲
上位プラン強制の有無 必要な機能が下位プランから外れ、上位プランへの移行を迫られていないか
代替手段の有無 同等機能を持つ他社SaaS、または自社での代替が現実的に存在するか
業務固有部分の内製化 自社の業務フローに合わせて使い倒している部分は、内製化の検討対象になり得るか

どの軸に当てはまるかで優先度は変わりますが、優劣を断定する基準ではありませんどのプランに該当し、いつ更新を迎えるかが分かれば影響は事前に見積もれます。

自社の契約状況を客観的に整理したい場合は、無料のAI自動化診断も選択肢です。

残すべきSaaSも存在する — 両論併記

値上げが起きたからといって、契約しているSaaSをすべて置き換える必要はありません。電子帳簿保存法やインボイス制度など制度対応が続く会計・給与SaaSは、制度追従のコストを自社で肩代わりする負担のほうが大きくなりやすく、残す判断が妥当なケースが多いです。「残す」と「置き換える」を分けて考える基準freee・マネーフォワードはやめるな — 残すSaaSと置き換えるSaaSの見極め基準で6つの軸に整理しています。

AI駆動開発で作り替えると、何がどう変わるか

汎用SaaSの積み上げをAI駆動開発の専用システムに置き換えると、契約は「複数SaaS×ユーザー数課金」から1社1環境の専用システムに変わり、アカウント数の増減で月額が変動する構造ではなくなります。体制は、担当エンジニア(FDE)が業務の棚卸しから運用の定着まで伴走する形が中心です(FDE型AI導入支援とは)。進め方は、まず業務を棚卸しし、最初の1業務に絞って動く最小限のシステムを作り(MVP=実用最小限の製品)、動作を確認してから対象を広げる順です。費用は月額のライセンス費用ではなく、初期開発費用と保守費用という構造になります(金額は開発費用の相場解説を参照)。SaaS側の料金改定の影響を直接受けない代わりに、保守と改修の費用は自社で計画する必要があります。一方、制度対応が続く会計・給与領域や、他社との標準的な接続が必要な業務は作り替えに向きません。

よくある質問

SaaSの値上げにはどう対応すればよいですか?

契約更新日・通貨・アカウント数を先に把握し、値上げ発表後に慌てないことが基本です。個別交渉の余地があるかは契約窓口に確認してください。

為替を理由にした値上げと、機能追加を理由にした値上げは何が違いますか?

為替要因は現地通貨建て価格を米ドル水準に近づける調整、機能追加型は新機能とセットで単価が上がる改定です。対応の考え方が異なります。

値上げを機にSaaSを乗り換えるべきですか?

値上げそのものは乗り換えの十分条件ではありません。代替手段の有無や移行コストとあわせて判断する必要があります。

アカウント数と料金の棚卸しは何から始めればよいですか?

契約しているSaaSを1枚の台帳に洗い出すのが最初の一歩です。詳しい手順はSaaS費用の棚卸しガイドにまとめています。

「SaaS is dead」という言説の背景はSaaSは終わるのか、大規模SaaSの総保有コストの考え方はSalesforceの総保有コストを試算する、SaaSを解約する際の実務はSaaS解約FAQ、残す・置き換えの見極め基準はfreee・マネーフォワードはやめるなで扱っています。

自社のどの業務からAI化すべきかを知りたい方は、無料のAI自動化診断をご利用ください。自社の業務に合わせたシステムをAI駆動開発で作る場合の相談・見積りは、株式会社Walkersのシステム開発事業で受け付けています。本記事は、FDE型のAI導入支援を行う株式会社Walkersが運営しています。

参考

SaaSの料金改定は随時行われるため、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。以下は執筆時点(2026年9月9日)に本文を確認できた公式発表・公式サポートページです。

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